生きる力の確認作業

旅について

生きる力とはなんだろう。生活力や家事力、女子力とか、稼ぐ力に愛される力、まあ何が正解かはよくわかんないけど、世の中には生きる力っぽいものの指南書がたくさんあるだろう。

わたしが生きる力と聞いて思い浮かべるのは、お金も電波もなくても、言葉が通じなくても、目的すらなくても、どんな状況でも異国の地を楽しむ力。この力が、全ての人にとってイコール生きる力かと言われればそれは違うとは思うのだが、そんな力があれば、わたしは生きる力を失っていないのだなあと安心するし、じゅうぶんである。ひとり旅は、わたしにとっての生きる力の確認作業だ。

学生時代は、この力がずいぶんあった。あの頃のわたしならどんなに貧乏でも生き抜けると思うし、とりあえず楽しみを見つけられると思う。フィリピンでひとり1ヶ月卒論の調査をしたときは本当にお金がなかったし、現金しか持っていなかったから「足りなくなった」じゃ済まされなかった。現地の知り合いに散々観光地を勧められたけどどこにも行けなかった。それでも、毎日同じ角を曲がって、うるさくて汚くて臭い大通りを命懸けで渡って、オフィスに行って帰るだけでも楽しかった。

そんなわたしも、社会人になって時間が経つにつれ、トラブルを切り抜ける力はまだあるが、楽しむ力が衰えてしまった。

コロナ前最後のひとり旅、2019年のフィリピン・ボラカイ島。世界から人が訪れる青い海と白い砂浜のリゾート地で、滞在中に台風が直撃。現地の人との会話のなかで、明日台風来るよ、という情報をキャッチ。フィリピンは日本よりも台風がやってくる頻度が高いので、現地の人たちはいつものことよみたいなテンションだったが、インフラが止まるだろうと判断。その日の夜中のうちに、翌日台湾に逃げる航空券を購入し、ボラカイ島滞在24時間で、退散した。

やんかな
やんかな

このとき、宿代キャンセル料全泊分だったね

結果、フィリピンの空港はその翌日から1週間閉鎖され、その間は1機も飛行機が飛ばなかったのだから本当にいい判断だった。そのトラブル回避能力を、その後1年くらいは度々思い出して自分を褒めた。

ただ、正直なところ、少ない時間で肝心のボラカイ島を楽しんだかというと、なんか楽しくなかった。なぜだろう、テラスで朝ごはんを食べながら、なんて美しい朝!などと感動しているのに、一方で心から楽しいわけでもない、ということばかり考えていた。

コロナを経て最新の海外ひとり旅は、2022年末のタイ。バンコクとチェンマイをゆるっと旅した。山の上のお寺に行った際、帰りの交通手段が見つからず1時間弱歩きまわって途方に暮れ、他の観光客がチャーターしているタクシー(ソンテウ)にお願いして一緒に乗せてもらうという図々しさで何とか下山を果たした(お姉さんたちありがとう)。
そのときも、「わたしまだ大丈夫やな」などと生きる力を確認したのだが、1週間を通して思ったことは、心から楽しめなかった、という悔しさ。性格が変わってきた?このところ、海外でひとりを楽しむことができていない。

やんかな
やんかな

ひとり旅が何よりも好きだったのに…

こうやってひとり旅をすることで、自分の生きる力がどう変化していっているかを確認している。2018年の韓国ひとり旅くらいから、薄々感じていた楽しむ力の衰え。純粋に楽しむことができなくなった理由はいくつか考えられるがそれはまた別の記事で書くことにして、この衰えに抗うのか、自分自身の変化と受け入れてみるのか、まだ決めかねている。

ボラカイ島に行った時点では、しばらくひとり旅は辞めようと思った。それでも、「何か変わっているかも」と確認したくて、懲りずにひとり旅を続けている。わたしは大丈夫という、若い頃の根拠のない自信を取り戻したいからか。

ひとり旅は、生きる力の確認作業だ。だから、これからも悔しい思いをしてでも続けるのだと思う。楽しいだけが旅ではなくて、そういった悔しさや歯がゆさ、できなくなったこととも向き合うことが、自分自身と向き合い、変化に気づくきっかけになるからだ。そういう事実から目を背けていては、いつのまにか何もできない自分になっていそうで怖い。幼い頃から冒険家や旅人にものすごく憧れていた。世界ふしぎ発見のミステリーハンターになりたかった。そういう過去もあってか、少し無理をしてでも、憧れの「旅人」になれた自分を、手放したくないのだと思う。

やんかな
やんかな

好きな自分のままでいたい


ただ、やっぱり誰かと旅行するのはものすごく楽しい。友人やパートナーと一緒だと、トラブル回避どころかその人のことを大いに頼ってしまい、ただ着いていくだけのポンコツになってしまうのだが、旅ならではのそのときの感情を誰かと共有できるのはとても素晴らしい。ひとり旅とは違い生きる力は確認できないが、ただ楽しくてかけがえのない時間だ。


だからこそ、頑固にならずに、ひとり旅も誰かとの旅行も、自分にとって必要なこととして、どちらも諦めずにいたい。これからも、旅を一番の趣味として大事にしていたいから。

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